2012年度 東京セミナーに参加しました


2012・8・27(月)

東京セミナーに参加しました(8.25~8.26)
昨年度に引き続き2回目の参加です。
全国から120名が集まりました。

今年度は、昨年度までとは違った方法で二日間行われました。本当に中身の濃い内容だったと思います。今までとは、やり方を変えた全断連。私は、断酒会そのものを『新生させたい』という理事長をはじめ、理事の方々の思いを感じたことでした。(だって、断酒会、全断連がどうなろうと、今までのやり方を続ける方が楽です。何か一つ変えるのにも、本当にエネルギーがいります。いろいろ外野もうるさいでしょう(!?)そこに、一歩踏み込んだ、踏み込もうとしているということは、このままではいけない、なんとか、酒害に苦しむ人を一人でも多く助けたいという強い思いを私は感じました。)

また、この二日間の成果を、各ブロック、各県、各断酒会に持ち帰り、話し合ってほしいということでした。私は早速、このホームページで内容を紹介したいと思いました。高知県断酒連合会秋季研修会1014日(日)では、この東京セミナーについての報告をする予定です。その時は和気先生の講演の一部を映像で流すなどして、より分かりやすく、高知県内断酒会の皆さんに報告をする予定です。

 

(1)全体の流れ

どのような二日間だったかというと、まず、医療法人和気会 新生会病院名誉院長 和気隆三先生の講演「社会は変わっている。断酒会はこれでいいのか?」の基調講演を受けて、5つの分科会に別れ、討論がなされました。そして、分科会でそれぞれ話し合ったことを、全体会で報告し、みんなで内容を共有し、全員のものにしていくという今までの断酒会にはない画期的なやり方でした。全体会でも、補足説明や分科会に出たことに対して、ほかの分科会から質問があったり、また、和気先生からも話し合った内容についてアドバイスをいただいたりしました。

 

(2)  基調講演「社会は変わっている。断酒会はこれでいいのか?」
       医療法人和気会 新生会病院名誉院長 和気隆三先生

和気先生の基調講演の題名そのものに、今の断酒会の実情が表れていると思いました。和気先生からは、「昼例会」をもっと増やしていこうという提案がありました。ここで大事なことは、和気先生は、何も「昼例会」だけを勧めているのではないということです。「昼例会」を開く方が良いと思う理由をいくつか挙げられましたが、そこに、社会の変化とアルコール依存症者の置かれている実情があり、それに対して、今までどおりのやり方で断酒会はいいのかという和気先生からの断酒会に対しての投げかけなのだと思います。だから、「昼例会」うんぬんだけを取り上げて、今後話し合うのではなく、この依存症者を取り巻く社会の変化に対して、どう柔軟に対応していくのかということを話し合う必要があると思います。その一つが「昼例会」なのだと私は理解しました。和気先生から断酒会に大きな宿題を頂いたのです。

昼例会を開く理由として

☆高齢者のために
・アルコール依存症者の高齢化に伴い、日中飲まずに集える場所として
・夜間の外出に不安のある方に参加しやすいように
・時間的、距離的に夜間の例会参加限界のある方でも昼間なら可能では
☆就労の場がない方のために
・昼間孤独に陥ることがないように仲間作りの場として
(就労継続支援B型事業所として、堺市を中心に『フェニックス会』があるそうです。)
☆障がい者のために
・夜間の外出は、不安や危険を伴う場合も多い
・昼例会では、バリアフリー設備のある公共施設を利用しやすい
・介護支援の枠組みの中で参加できる
☆家族のために
・子どもにとって酒害者が飲んでいるときは、虐待、断酒してからは放置
・家庭内の実情に応じた例会の場、時間を選択できる
☆女性酒害者のために
・夫や子どもを残して、夜間に外出することに、まだまだ理解と協力がない
・昼間の方が参加しやすい方も多い
☆医療、行政、介護機関の参加のために
・業務時間内のため参加しやすい
・アルコール依存症者に関係するすべての機関の連携の機会にもなる
・断酒会の活動を広める機会にも

等あげられました。
和気先生は、今の断酒会について、大会や研修の挨拶の中でも、よくお話されることがあります。今回もおっしゃっていました。

『今の断酒会に、新しい人を受け入れる力がなくなっている。新しい人が、心を開いて語ってくれるまでに、発言を強制したり、指導したりすることが当たり前になっていないか?新しい人の話を、心から聴いているのだろうか?それが新しい会員の参加が継続していかないことにつながっているのではないかと思う。』

(3)  分科会 

A班「高齢者、若年者、女性の為の例会のあり方について」
B班「断酒会機能としての断酒学校、研修会の役割」
C班「リーダー像を考える」
D班「医療、行政、断酒会のネットワーク作りの構築について」
E班「家族の果たす役割と家族会」  
の5グループに分かれて討論がありました。各班話し合った内容を全体会におろし、内容を共有しました。話し合ったこと、質問されたことや、和気先生からの話、全断連からのお答えなど分科会ごとにまとめてみました。
 
A班「高齢者、若年者、女性の為の例会のあり方について」
昼例会について話し合いをし、実際に昼例会に取り組んでいる断酒会の話が出た。静岡では、ランチ例会、沖縄では、朝例会もあるとのこと。概ね好評である。しかし、人材不足という問題もあるが、定年後、積極的に昼間やってくれる人もいる断酒会もあるとのこと。もちろん、昼例会をすべてにするというのではなく、通常の例会もあり、また、昼例会もあるという選択肢を増やして行く方向で。

B班「断酒会機能としての断酒学校、研修会の役割」

体験発表は大事であることはもちろんであるが、学習の場を増やすことも大事。断酒学校が、23日であることについて、長いのではという意見もあれば、地域的な実情を考え23日が妥当という意見も。断酒学校、研修会それぞれ役目がある。それぞれ、特異性を持った学校、研修があれば、選択して参加できる。新しい人がまず第1歩を踏み出せるためにも、研修会、学校へ行くことで、全国に輪が広がり、お酒をやめ続けることができる。日程が重なる部分については、全断連主催の場合は、調整しているが、各断酒会で行われる分については、任せている。

C班「リーダー像を考える」
アクションプランの中の一番大きなテーマである。「『リーダー』という言葉は似合わないが、断酒会が組織である以上『世話役』は必要であるという認識から討論をスタートさせた。人間性や、組織をまとめていく力、行政や医療など対外的な断酒活動ができる人など、たくさんのリーダー像が出された。
リーダーで会は変わる。その人がどういう経験をし、どういう活動をしてきたかが、後の断酒活動に影響する。断酒学校に繰り返し行くことで、確実に次のリーダーが生まれる。新しい人に、どこまで手を差し伸べるべきか、どこから見守るべきかそのさじ加減が大事。自分が例会、研修会に行くことで一緒に行こうと声をかけることができる人。 

D班「医療、行政、断酒会のネットワーク作りの構築について」

このネットワークに「介護」入れてほしいと和気先生より。
ネットワーク作りに四苦八苦している現状があるが、断酒会が積極的に動く、マスコミやホームページの活用等。昼例会の前後に関係者が集まることも可能。 

E班「家族の果たす役割と家族会」  
・家族会のない断酒会は自らが家族会を立ち上げる
・社会の偏見を取り除く活動、アルコール依存症者の家族に対してメッセージ
(高知県断酒新生会家族会で取り組み中)
・例会・・昼例会の推進
・家族も行政とのネットワークを持つ 
(高知県断酒新生会家族会が行政に働きかけ、「断酒会の家族がアルコール依存症者の家族の状況をよくするために活動を始めている」ということを認識してもらえた)
・勉強会の実施
家族が元気になる研修会。家族が自分のためになる例会の運営がされるべき。
・例会のあり方


(4)まとめと感想

WHOの調査によると、依存症者本人の苦しみもあるが、周囲への害、つまり家族へ及ぼす害はヘロイン、クラックコカイン、覚せい剤に比べ、アルコールが一番であるという結果が出ているそうである。(資料をいただきました。以下がその資料です。

『WHOのアルコール有害使用低減世界戦略から見た日本における現状と課題
 ey Words  アルコールの有害使用、課税政策

  飲酒運転、社会的コスト、広告規制

  本人への有害性を身体的、精神的、社会的の害の3種類に、他者への有害性を身体的および精神的、社会的の2種類に分けて、計5項目のサブグループに分類し、各薬物を0(無害)~100(最も有害)に点数化した。

 その結果、アルコール(72点)が全般的に最も有害な薬物と評価され、次いでヘロイン(55点)、クラックコカイン(54点)と続いた。クラックコカイン(37点)、ヘロイン(34点)メタアンフェタミン(32点)は本人への有害性が大きかったが、他者に対して有害性が大きかったのは、アルコール(46点)、ヘロイン(21点)、クラックコカイン(17点)であった。この結果からもアルコールは広義のドラッグのなかでも他者への害が一番大きいことが示され、有害使用低減対策は喫緊(きっきん)の課題である。※喫緊(きっきん)・・急いで解決する必要がある、切迫した問題。差し迫った課題。

        (和気先生からいただいた資料より)

家族といっても、その立場は、妻だけではなりません。近畿の断酒学校では、分科会として、「アルコール依存症の子どもを持つ親」「アルコール依存症者の妻を持つ夫」があるそうです。社会の変化、アルコール依存症者を取り巻く実情の変化に柔軟に対応しているという事実を知って、本当に勉強になりました。

私は家族会の分科会に出席しました。全国から多くの家族が集まり、活発な話し合いをしました。情報交換ができたこと、そして、情報交換に留まらず意見を交わせたことは大きな収穫でした。

津山断酒新生会家族会、高知県断酒新生会家族会が少しずつ動き始めています。この動きをこの二つの家族会の動きだけにしないで、今後全国に発信する予定です。そして、全国の家族会が「自分たちはこれからどうしたいのか、これからどうしたらいいのか、何ができるのか」そんな話ができると、一つ一つは小さな一歩でも、全国の家族会が集まると大きな一歩になると思います。そして、変わらないと思っていた社会も変えられると信じています。

私は、断酒会につながって、家族会というものを知りました。もし、家族会がなければ、私は断酒会から遠ざかっていたかもしれません。同じような思いをした家族でしか分からないこともあります。そんなことを話せる場があることが普通でした。でも、他の断酒会では、家族会がないところもありました。また、家族会があったけれど、なくなったという断酒会もあると聞きました。家族会は当たり前にあると思っていた私は、衝撃を受けました。家族会がない断酒会の家族の方は、大丈夫なんだろうか・・・。これから入会する依存症者の家族は、断酒会につながるのだろうか・・・と。

アルコール依存症者の家族だから、分かること、できることはたくさんあります。この東京セミナーで、家族会のあり方について、いろんな意見を出し合い、話し合いをしました。このことを持ち帰って、また、来年度に向けて、全国の家族会が動き出すことがうれしいです。

 

(5)  最後にどうしても・・・これだけは言いたい!!

「勉強をするとよくない」「『指針と規範』は始めての人には見せないほうがいい」という全断連からの発言を聞いて目が点になりました。「今何時代??」「情報が何でもかんでも(正しい、正しくないは別として)溢れている時代になんて時代錯誤!!!!!!!!」「逆行している!!!!!!」と思わず分科会の中で強く反論してしまいました。すいません。確かに、知識を得たために、頭でっかちになってしまう人はいるかもしれません。それを心配してのことだとは思います。
 
頭でっかちになって飲む人もいれば、頭でっかちにならなくても飲む人はいます。反対に、何十年経っても「指針と規範」に書かれている意味が分からない人がいるかもしれません。分からなくても、お酒を止めています。いろんな人がいるんです。頭でっかちになった人も、いつかどこかで気づくかもしれない。指針と規範が分からないから駄目だということもない。いろんな人がいて断酒会が成り立っているんです。

断酒会で知識を得ることをいいと思わないのか、何なのかよく分かりませんが、「勉強したら飲む」「研修に行きよったら飲む」等と言われたこともあります。知識を得ることで飲む人もいるかもしれないし、飲まない人もいます。その人自身の問題です。知識を得ることの問題でしょうか?

女性が勉強することに対する、嫉妬?のようなものを根底に感じるのは私だけでしょうか?この21世紀の時代に・・・・。なんてこと!!

私は、「指針と規範」を読んだ時、そうか・・と納得しました。そして、安心しました。断酒会はお酒を止めるだけではない、生き方を変える会なんだと。その「指針と規範が」入会何ヶ月後で、どのようなタイミングで渡されたのかはっきりと覚えていませんが、もしかして、このタイミングがいいと会員の誰かが判断されたのかもしれませんが・・・。
 

「例会に行きよったらそのうち分かる」確かに分かります。その通りです。でも、その方法だと人がつながらないから、このままではいけないと、全断連は今変わろうとしているのですよね。でも、所々に、やっぱりチラチラと見えてきます。昔の体質が。もちろん引き継がなければならないことは、きちんと引き継ぎましょう。そして、変えたらいいことは変えていきましょう。そして、やっぱり、きちんと勉強をして正しい知識を得ましょう。それが、私がどうしても最後に言いたかったことです。

 

2012年度東京セミナーに参加できたことを感謝いたします。事務局をはじめ、皆様にはお世話になりました。ありがとうございました。

                   W・K