埼玉県立精神医療センターの成瀬暢也氏による講演の概略は以下の通りでした。
去年、薬物およびアルコール依存症の家族に対してアンケート調査をおこなったところ、たくさんのメッセージを頂いた。その結果を受けてことしはこのようなフォーラムを全国5ヶ所で開くことができた。これはぜひ次につなげたい。
以下について話を進める
1.アルコール・薬物 現状と課題
2.今回の調査の結果
3.回復について
1.アルコール・薬物の現状と課題
■薬物は病気ではなく犯罪として扱われる。
治療システムは、なきに等しく、3流以下。
治療としてはダルクのみ(民間リハビリ施設)。
■処方薬依存へのシフトがはじまっている。
インターネットを通じた場合、罪悪感もうすい。
都会的な精神・心療クリニック急増。
向精神薬の乱用・依存が急増。
急増した精神・心療クリニックはアルコールに関して寛容!
医療からみると大きな問題。
依存症の治療をおこなわないと、また同じことを繰り返す!
■実際の医療現場では・・・
アルコール依存症:身体科からきらわれる
薬物依存症 :精神科からきらわれる
何故かというと
薬物・アルコール依存症の患者は
トラブル多い
人格障害多い
ドロップアウト多い
暴力団が多い
暴言・暴力多い
精神科の44.6%しか薬物依存患者受け入れていない
治療なんか無理だという感覚が今もあるのが現状
■以上の問題をまとめると
誤解と偏見が多い
医療機関が少ない
治療の質が高くない
情報が少ない ということになる。
2.今回の調査の結果
(※必死でメモを取りましたが、細かい数字をもし間違えていたら申し訳ありません!こんなにノートをまじめに取ったのは学生時代以来です!)
■平成20年に調査を実施 回収率は
アルコール 2032/6737 (30.2%)
薬物 553/1298 (42.6%)
■どのルートを経由したか
アルコールの場合
断酒会 81.9% 医療機関 12.0% その他
■家族の平均的な姿
女性 90% 年令59.9才
配偶者79% 親11.7%
■本人の平均的な姿
男性 89.6% 年令59.0才
家族同居 83.3%
断酒継続中 79.3% 時々飲む 8.4% 頻回飲む 4.7%
(断酒会経由で回収したアンケートが多いため?)
仕事45.7% 家族17.11% 年金46.4% 生活保護3.2%
■家族の実態について
どんな影響を受けているか?
身体的、うつ、収入、患者の浪費、飲酒運転、暴言、不和
精神科を受診 75.3%
生活・仕事に影響 48%
当事者との関係では
おびえ 66.7%
せめる 52%
とらわれる 45.6%
世話を焼くその他
→家族が病んでしまうのは当然!!
■アルコール家族のストレス
3点以上 58.8%
10以上 15.9% 治療必要
■相談対応について
まず行くのは 医療機関・保健所が多い
■相談満足度
断酒会 満足60% やや満足も入れると 90%
警察20%、医療30%、保健所30%
■相談して助けになったのは
自助グループ 74%
病院 50%
保健所 1割
精神科 1割
■アルコールに気づいた 平均41.7才
相談したのは 平均47.2才
※気づいてから相談まで5.5年かかっている
■困難なのは
相談先がわからない 7割
※今回のアンケートは断酒会82%、ダルク薬物家族会74%なので、援助機関につながっている家族が多い。つまり比較的良好な家族集団だと言える。しかしそれでも、ストレスは深刻である。
家族グループに通い続けることで当事者の対応に余裕が持て、ストレス状態も改善することが予想される。
家族が求めていること
・依存症は病気なので偏見をなくして欲しい 74%
・相談・治療機関の情報が欲しい 70%
・家族のカウンセリングやグループ援助の普及 69%
3.具体的な対策
回復について(成瀬より)
■患者の特徴
1.自己評価が低い、自信が持てない
2.信じられない
3.本音が言えない
4.見捨てられ不安
5.孤独、寂しい
6.自分を大切にできない
以上は、親との関係において安心感・安全感を持てなかった事による場合が多い。
・対人関係においてストレスをためやすい
・「酔う」ことに慣れる
・コントロール失う → 依存症になる
■回復のためには
・依存症の基は → 対人関係障害
・ありのままの自分を受け入れてくれ安心感安全感をもてる場所・仲間があって、いやされる
・単にやめているだけでは× 他の嗜癖行動に移ったり、うつを起こす
・自助グループで正直な思いを話す
・回復の進んでいる先輩を目標に、自分の居場所(安全な場所)を得る
■自助グループで、本当の仲間と居場所を得たら
・本音が言えるようになる
・見捨てられ不安なくなる
・人を信じられる
・孤独でなくなる
・自信がもてる
・自分を大切にする
↓
「酔う」必要がなくなる
「依存症から回復」=「対人関係障害の改善」
患者の多く(若い人や女の子などは率直に)が口にする言葉「おかあさんにギュッとして欲しい」